りこみあうものがあって、どちらもそれ以上の言葉を発しなかった。陶器の塀に包まれた庭に、露を噴いた若竹が節青く際立たせ、その向うに夕闇が降りて来た。脂肪でぎらついている顔の間を、湯気を立てた料理の鉢が廻って来たとき、矢代にはそれがまだ昨日とつづいている日常の水脈のように親しく見え、懐旧の情をさえ覚えた。実際、もう昨日までの一切の話題は、どこか古びた形骸に見える今宵だった。随ってこの日の会合の議題となるべき、
「東西両洋のヒューマニズムの相違について」
 というテーマも、一同の胸中から散り落ちた無力なものに思われた。政治や経済や、思想や、その他文化百般の問題までが、華北で火を噴き始めた一角に集中された形で、各自の想像力がそこを中心に爆け飛び、とどまるところを知らぬ思いのまま、鶏や、豚や、家鴨の肉を盛った皿の上へ、自然に顔も俯向くのであった。
「もうこれで、平和は終ったよ。」
 床の青柿の実を背に憂愁を瞼にたたえた哲学者の一人が、皿から顔を上げて云った。
「どうもそうらしい。」
 その傍の文学者がそう云った途端に、突然、司会者が、機を掴んだらしく温厚な口調で発言した。
「それでは皆さん、これ
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