のも、やはり一つの調和なんだなア。」
 傍の槙三には矢代の呟きも響いたらしく、
「うむ。」と頷いた。そして、
「そうですよ。ただ僕らにはそれが分らぬだけらしいですね。」と附加してから、東京へ帰れば友人に数学の天才が一人いるから、一度その人物を連れて訪ねたいということを話した。
 宿では矢代は千鶴子の部屋で、共通の知人たちをさがして二人で寄せ書きした。書きながら彼は調子の上ってゆく自分を抑えかねた。非常に嬉しいときに書く文章だと思うと、自然にあてつけがましくなりそうなのも用心した。しかし、二人で何もせずただ卓子に対きあってペンを走らせているだけだのに、寒風の通りすぎた充実した部屋の中にいるように感じられるのは、あながち、二人が結婚の準備をまったく今は終ったからだとも思えなかった。また、旗亭で京都の舞いを見た興奮からでもなく、一つは、頭の芯にこびりついていた長い間の疑問の解けた気分によること多大だとも思った。実際それらの幾つもの理由が一時により集り、彼はいつとはなく愉快になっている自分を感じた。
「とにかく、まアいいから、早くお前はお帰りなさい。」
 昨日、九州の村道で故郷の山が、彼に京都
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