の人にあいにけりって、そんな句お作りやしたの、俳句かしらそれ。」
 と槙三に訊ねた。部屋の中が一層陽気に笑い出した。仙鶴の話が無邪気だったばかりでなく、舞妓の質問に当惑した槙三の真面目くさった顔が、皆の注目をひくのだった。老妓が来てから座敷は踊になったが、鶴千代と二人で踊る秀菊の指先は、ませた表情をこめてよく反った。鶴千代の方は努力を下に隠した素直さで、客には紊れぬ習い締った眼もとだった。鼓の音に乗り、鳥の子の襖を背に淀みなく廻っている金扇の流れを見ていても、矢代には、ともすると、それがAとBとの定律の舞いのように見えたりした。表と裏とに重なったり、放れたり、屈伸する二人の運動のすべての美しさが、老妓の唄う一本の呼吸から繰り出されている調和も、この夜の座敷には殊に暗示が深かった。舞がすんで二人の頭がぴたりと下に沈んだとき、矢代は何か得た思いがして拍手を送った。たしかに舞そのものよりも暗示につよく撃たれた喜びを感じ、自分の興奮が気持ちよかった。
「京都はいいなア。」
 宿へ帰る自動車の中で、矢代は、九州からの車中の重苦しさも溶け気軽くなって、こう傍の千鶴子に云った。
「これで争いというも
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