ええ所で作らはる、狡やなア。」
 新しく縁へ出て来た妓が、同様にまた並ぶと、「東山、東山、」と呟きながら、これも指を折り始めた。何をするのかと矢代が、その鶴千代という妓に訊ねると、このごろは誰も俳句の勉強を命じられているのだとのことだった。
「みんな俳句作るのか、そいつは油断がならぬぞ。」
 由吉も背を延ばして山を仰いだ。正面に月をうけて立った舞妓たちの簪のびらびらが、せせらぐ川波の中で揺れていてまだ宵らしくつづいた川向うの灯が、橋を渡る夥しい人の足を浮きあがらせて賑かだった。
「向う見て寝たる月夜の東山。」と秀菊が云って笑った。
「けったいな俳句やなア。蒲団きてやわ。」と傍の鶴千代が肩をつついた。
「そうかて、顔隠してやすやないの。」
 欄干にふれてだらりと垂れた二本の帯の長い裾が、しなやかに打ち合ったり戯れたりした。川水が胴の間を満たし、洗い清める流れで遠くまで月に踊っていた。白牡丹と藤の花のおもい簪に、菊模様の襟を高く立てた、仙鶴という舞妓が槙三の傍にひとり残っていて、舞扇を襟から抜きとり、
「こないだ先生がね、夜桜の句お作りなさいとお云いやしたの、そしたら秀菊さんね、夜桜や隣り
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