ね。そうすると、それを日本の高木貞治、――あの数学の博士がわけもなく証明してのけたというんだよ。」
 日本人の能力のなかにも、そういう数学的に卓越した遺伝が蓄積されているということを、龍安寺の石庭からの暗示として、由吉は云いたかったものだろうが、それとは別に、矢代は、自分が去年千鶴子と結婚した夢を見た日のことをふと思い出すのだった。そしてその夢の事実になろうとしている時が刻刻にせまっていることも身に感じ、ふと山を仰ぐと、月が東山のふくれた腰の部分に頭を出した。顔を揃えた河原の石がそれぞれまるく静に水中に浸っていて、月の光に綾目を乱した川水が、ひたひた部屋の中までさし拡って来るようだった。
「外人の青春の夢を、日本人が解いたというのは、なかなか暗示的でいいね。」
 と佐佐は嬉しそうに河原の方を見た。矢代は月を仰ぎながら、京都文明の永い歴史の中に顕れた多くの月も、今みるこの山のそこから、こうして出たものだろうと思い、庭に石を置くときも、夢窓国師は自分の名の含む想いとして、一度は月を考慮に描いたことだろうと推察した。
「数学の専門家はどうですか、龍安寺の庭について、別の意見があるでしょう。」
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