家の墓の一つも混らぬ墓地というものを見るのは、初めてだったので、そう云われると彼もうろたえを覚え、先ずどの墓を主にして拝んだものか見当もつかず、
「祖父さんのはどれでしょうか。」
と若い和尚に訊ねてみた。和尚は墓地の一番端にある一つを指した。今まで父以外に、一族の中では、祖父がもっとも親しく権威あるものと思われていたのも、亡くなった先祖たちの中では、末座にかしこまっていたのだと彼は知って、亡きものの特別な順列の厳しさだけは、生あるものいかんとも狂わしがたい自然の命令だと思った。彼は父の骨も石の出来るまで祖父の前の片端へ置いてもらいたいと頼んだが、こんなことは母からも聞かされず出て来て見て気づいたことの一つなのは、やはり母は争われず、自分と違う他郷のものだったと、今さら彼は思うのだった。
納骨の場を掘ってくれている間に、矢代は墓石の間を廻り碑面を読んでみた。絡りこもった野茨の蔓が白い小花をつけて石を抱き、嫩葉の重なり茂ったその裏から、滴りを含んだ石の刻みがつぎつぎに露われた。みな古い時代のもので矢代の知らぬ先祖たちばかりだったが、いずれも氏名は矢代と同じで、また碑面の姓のどれにも藤原
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