たちの念い描くふるさとの、釈尊の歯を埋めたと云われるセイロン島の樹陰が不意に泛んだ。むらがり立った緑樹の驟雨にうたれて雫する下に、黄色な僧服の隠見した島で、霽れ間に空に立のぼった夕茜のひとときの麗しさ、紫金色のむら雲舞い立つその凄じい見事さにあッと愕き仰ぐ幻に似た荘厳幽麗な天上の色、今も彼には忘れがたかった。
「それでは、お詣りさせて貰います。」
 法要に来ている客への接待を、そのまま和尚につづけてもらい、折を見て矢代ひとり廊下をわたっていった。この寺の本堂も、山村でよく見る山寺と違わなかったが、ここに寺のあるからは、矢代の父祖たち滅亡のさい、城とともにいのちを捨てた者ら最後の場所かとも想像された。高縁の端に立って見渡す一塊の山野の眺めは、鏝で塗りあげたような水田の枠の連った山峡の風景とはいえ、嫩葉の伸びた草叢の襞に入り籠って来たものの品種は、セイロンからの仏の流れだけではなかった。南蛮と直接貿易をしたフランシスコ宗麟が、初めて日本に大砲を陸揚げして、彼の先祖の城を滅ぼした西の浦の入江も、すぐ真近の海べだった。この宗麟や千鶴子の信じたカソリックのふるさとの、フィエゾレ聳える西方の国国も
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