一座が暖かな日ざしに変るのを彼は覚え、また仏壇の方へと心が向いてゆくのだった。
「ここのお寺は、たいへん古いお寺だとか父から聞かされていましたが、建ってからよほどになるのでしょうね。」
と彼は右側の客僧の一人に訊ねた。
「三百五十年です。」
座の端からこの寺の若い和尚が、中学生らしい声で初めて答えたが、それも亡父から聞き伝えたままの素直な響きで、同じく父を亡くしたばかりの矢代には悲しく聞えた。
「じゃ、相当に古いですね。」
弛みの出た木組ながら、この下で棲んだ僧たちも幾代も変ったことだろうと彼は思った。旅をしつづけていたものらは、矢代一族のものだけではないのであった。この座に並んだ僧たちそれぞれも、家を出て、これで釈尊の故郷を胸に描き、寺から寺へと流れわたっていた旅人一属にちがいなかった。そう想えば、旅人の集りに似た宿所となった一間とはいえ、も早や互いに惻隠の情さえ通わぬのはただ想うふるさとの相違するものあるばかりかもしれなかった。
矢代は自分の妻となるカソリックの千鶴子の念うふるさとはエルサレムだとふと思うと、一瞬胸ふさがる寂しさに襲われたが、そこを知らぬ彼には、前に並んだ僧
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