、矢代は見て来た。
「およそ惟んみるに、生きとし生けるもの、尽くみな己れ己れの志を遂げんことを歎くなり。秋の鹿の笛によって猟人の為にその身を過ち、夏の虫の灯火に赴いて空しく命を失うも、この故ならずや。人倫もなお此のごとし。さればゼススのコンパニヤたち故郷を出でて茫茫たる海に浮かみ、雲の波、煙の浪を凌ぎ今この日域に来って貴き御法を弘め、迷える人を導きて直なる道に引入れんとする事も、心の願いを達せんがためなり。――」
いつか読んだ信者に法を説いたキリシタンの僧たちの、ここに入り込んだ初めに語ったこんな言葉も、仏教より転じた仏僧の翻訳語から弘まっていたのだった。
「みなそれぞれ旅をしているのだ。すべてのものは旅のものだ。」
凡庸な感傷も胸を透って、庭の中央に枝を拡げた一本の銀杏の樹を見上げ、矢代はそれも同様に支那から流れ来たものだと思った。隋の霊帝の弟がこの地へ渡って、さらに一派が三浦半島に移り棲んだという記録も彼は読んだことがある。しかし、渦巻き変り、入り変りしたこれらのものの残した苦しい愛海の呼吸は、みな今見るままのこれだろうか。しかし、何はともあれ、自分はこの風景の中から出たのだっ
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