ことが嬉しいと見えて、一家中でも彼がもっとも義理人情に厚い人物だと云って、家庭内における槙三のおだやかなことや、孝行者で不平不満を少しも云わぬ性癖のことなどを話した。
「そういうのこそ、知性のある日本人というのだなア。」
 矢代は広広とした横幅の石段の磨滅した傾斜の部分を選びながら呟いた。敷石の隙間に幼い草の芽が見えていて、日光が二人の影を鮮やかに段ごとに倒し、石の肌まで暖かそうな景色だった。
 矢代は寺務所で父の戒名を書きつけ骨箱を渡してから、本殿の方へ廻された。本殿と一番奥の霊屋との間の庭は、一町四方の緩い傾斜を見せた正方形で、真白な砂を敷きつめた単調さの中央に、正しく帯のように霊屋の正面まで石畳が延びていた。仏具のない寝殿造りの神社に似た霊屋は、照り輝く砂の白さに調和した破風の反りを波うたせ麗しかった。まったくここだけは、平安朝の姿をひそかに残した閑寂な明るさに満ちていた。庭の背後の杜の中から鶯の声も聞えた。
「ここはこれから、ときどき来たくなる所だな。」
 平坦な砂の中に立って矢代は、邪魔するものの何もない空を仰いだ。空を真近く呼びよせた砂の白さの中では、千鶴子のぴったり詰まっ
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