説がどこで停止するかも分らない有様なんですからね。実際、数学もこうなっちゃ、僕らはどこに信頼すべきか分りませんから、僕は苦しくってたまらなかったんですが、もう僕も覚悟を定めました。それでなければ、僕には自由な零というものが分らない。」
悲槍に静まって行く槙三の面にも、乗り出て行くものの微笑がおだやかに漂って澄んでいた。疑うならば、公理を信じることを誓う場所を、どこにしようとも同じである。しかし、それを信じるからには伊勢にしたいと願った槙三の意気には、数学よりも幣帛に思いを込める祈りの高まりが感じられ、パスカルのように以後この青年に対う困難な勉学の場所も、矢代には推察された。それはもっとも攻撃に満ちた困難な道のうちの、また特別に難事な場所であった。矢代は、そこでまた微笑をつづけて行くであろう槙三を想像することは、何より今日の心愉しい、みやびやかなことだと思った。その平和なみやびやかさが良いのだと思った。
西大谷で矢代と千鶴子は車から降り槙三と別れた。蓮池に懸った石橋を渡って納骨堂の石段を登って行くときも、矢代は稀に見る槙三の端麗な精神について千鶴子に賞讃した。千鶴子も槙三を認められた
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