る時の迅さを感じ、父の仕事のすべても、こうして自分を運ぶものに変えられているのが、暫くは何んとも奇妙な有り難さとなり、湖の水色も巻きこめた澄み細まった気持ちともなって、空明りの射して来るまで彼は呼吸を忍ばせた。間もなく、山科の平野は雲に蔽われた牛尾山の裾から開けて来た。彼は水車の雫の飛び散る川添いの垣根に、赭茶けて崩れた泰山木の大きな弁を眼にすると、父の骨箱をスーツに入れた。
 昨夜は雨と見えて京都の街の瓦はまだ濡れていた。矢代が京都ホテルに着いてから名簿を見ると、千鶴子たち一行はもう着いていた。矢代は朝も早すぎたので誰にも会わず、すぐ自分の部屋で湯に入った。そして、少し寝不足を補ってから十時ごろまた起きた。出来れば彼は午前中に納骨を済ませたいと思った。
 矢代が下のロビーへ降りて行ったとき由吉と千鶴子、槙三の三人は茶を飲んでいた。退屈そうにパイプを啣えている旅馴れた由吉の傍で、下唇の赧い槙三は、制服のまま人の好い微笑を泛べて黙っていた。千鶴子はエレベーターを出て来た矢代を見かけると、小腰を浮かせ片手を上げて笑った。矢代は寝不足の恢復で卓上の紅茶の湯気が新鮮に見え、折よく霽れて来たこと
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