く分骨にした二つの箱はスーツの中に入ったので、これを寝台の頭の傍へ置いてから彼はホームへまた降りた。母とは別に話すこともなかった。ただ彼は、いま少し母と妹との京都行きを自分からすすめるべきであったかと思われたのも、それを強く主張出来がたかった事情に対して、なおまだこのときも気弱く感じるのであった。母としても、良人の死のために結婚の日取りの延びた子の矢代を気の毒がり、こうしてひとり彼に良人を頼んだ配慮のあったことは、黙って並んでいる間も母子二人の胸に通って来た。おそらく母も、良人の骨を見送りに来ているとはいえ、一つは、子の新婚の初旅に出ようとする祝いをかねた心もあろうことなど、傍の幸子をひき据えて黙らせていることにも顕れて、常の旅とは違い、矢代は気まりも悪く寂しくも感じた。
「それから九州のお寺の方にも宜敷くね。」
 母は思い出したという風に、ぽつりと矢代に云っただけだった。彼は頷いた。そして、外国から帰った夜、ここへこうして彼の降りたとき以来、初めて母と並んでいるこのホームだと思うと、そのとき母の前に立っていた父が、自分を見つけて「あッ」と小さく唇を開けた瞬間の顔が眼に映った。人の散っ
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