の前を通り、曲った胴の剥げ落ちた胡粉や、ちらりと唇に残った紅の艶から、矢代は、やがては腐るもののおびただしい視線を吸いとって来た年月の、ある恐怖を誘う云いがたく静かな水水しさを感じるばかりだった。
博物館から四人が出て来たときは、まだ門前の椎の嫩葉に光が射していて、芝生の色の明るい方へ自然に足が動いた。東野は夕暮から出席すべき会があるというので、そこで別れて地下鉄の方へ真紀子と降りていった。矢代は千鶴子と陽のよく射した茶店を選んで赤い毛氈の床几に休んだ。どちらも疲れて黙っていた。そして、茶と鶯餅とを貰ってからそこに二人で並んでいると、矢代は何か急に老人じみた感じを覚え、またそれが却って一種ほがらかな、ゆったりとした気分になるのだった。
「ね、君、ちょっとお爺いさんお婆アさんになったみたいで、いいな。」
言葉もなくぼんやりと額に手を翳し、芝生を見ていた千鶴子はふふと笑った。
「芝生まで何んだか明るく見えるもの。」
「ほんとにね、お仏さんを沢山見たからだわ。」
「博物館を出て来ると、誰も少しは浦島太郎になるのかね。」
矢代はかるく鶯餅に手を触れてみて、こういう微妙な触感のものなど外国
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