崇高な輝きを見てとって、儼としてその危険な一線に踏み停ってみたところに、日本のある優美な精神の限界を見た思いがした。
「この光琳は活眼ではないが、涙眼ですよ。人は活眼の方が良いというけれども、しかし、涙眼もこうなると、もう涙にうるんで人には分らないな。」と矢代は、人があたりにいないのを幸い、東野にだけ聞えるように云った。
「活眼はこの友松だよ。」と東野は云った。
「これはまだ象眼を脱けたばかりだ。」と矢代は一寸云い返した。
「いや、これを象眼と見るのは、君の眼が光琳の涙にうるんでいるからさ。たしかにこの友松も素晴しいよ。第一、これは非常に純粋だ。」
海岸に網が干してあって、その上から帆のかからぬ柱が二三本見えるだけの、簡単な、直線の部分ばかりで構成された白描風の屏風絵だった。
「しかし、これは十の字を描いて、これこそ一番純粋な絵だという、例の、そら、モンドリアンだ。誰にでも純粋に見えるところを、純粋にして見せただけの工夫でしょう。」と矢代はまだ東野に譲らなかった。
「しかし、この時代にこれだけの絵画理論を結晶させて見せただけでも、ピカソだよ。しかも、あの網目の直線と柱の交錯を見なさい
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