ったところで四人は降りたが、降りてもまだ東野は話しつづけた。彼は外国から帰って以来、日に日に中国への関心が前より一層強くなって来ていることを云って、とにかく、僕らの注目すべきところは、今はヨーロッパではなく中国だとのべてから、また彼はこうも云った。
「中国はフランスと非常に似ているだろう。ね、パリなんて、あれは君、中国じゃないか。しかし、僕はフランスより中国の方が、文明の度は少し高かったと思うんだよ。何ぜかというと、フランスという国は、見れば分る幾何学の国だ。実にはっきりしていて合理的だ。幾何学を数に代えたのが代数だから、つまり、さっきも云ったとおり代数の国だといってもいいさ。しかし、中国はそうじゃない。あれは妙な変数みたいなものだよ。」
 屋根越しに不忍池が拡がり、折れた古い蓮の中から若茎の立っているのもよく見えた。矢代は椎の大木の嫩葉に日の射しているのを仰いでいると、博物館の中へ入るのが惜しまれて足も鈍った。
「しかし、中国と危くなって来たというのは、事実だろうな。これでフランスの共産党があんなに勢いを得て来た以上は、世界の均衡は破れたも同じだから、破れ口は西安で、蒋介石の頭へのぼ
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