子の感情は、間違いのない正直なことだと思った。今の彼女には、恐くないより恐れるのも美しいことだった。またそうであってこそ、彼には頼りになり得られる清純なものも感じられた。
「あたし、そのおとよさんという方に、一度会ってみたいわ。」
「結婚式には来るなと云っても、飛んで来ますよ。」
「あなたは本当は、おとよさんのようなそんな方、お好きなのね。」
千鶴子はパラソルの柄を頬にあてがい、愁い気に矢代を盗み見て云った。
「好きとか嫌いとかいうものじゃないですよ。とよのような人物が、日本というものの底にいっぱいいるんですからね。そんな律義な、誠実な大群が、島いっぱいに詰っているんだと思うと、その上に桜の花が散って来れば、もう文句はないじゃないですか。女の人はどこの国の人よりも貞淑で、美人だし、食物は沢山だし、景色は美しいし、退屈しない程度に四季の変化は充分だし。何を男は苦しんでるんだか、分らないな僕には。」矢代は今日は、こうして先日以来の千鶴子に与えた悲しみを少しでも慰めたくて、いつもよりよく饒舌る努力も怠らないのであった。また今日の自分のいうことも、みな一種の歌に似ており、どことなくとよの手紙
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