でも、猫であれだけ悲しんで泣くのなら、人間が死んだらどうなさるかしら。あれ以上は悲しめないわ。まア、みいちゃん、こんなになって、って、おんおんお泣きになるんですもの、あたし御挨拶のしょうがなくて、弱ったわ。御飯もその日は誰もお上りにならないんですって。お線香上げて、お華を上げて、お坊さんまで来たりして。」
「これこれ。」と母は幸子の声の上るのをたしなめた。
 たとい猫の葬いであろうと、父の死後まだ日数もたたぬのに、そういうことを口にする幸子の鈍感さが矢代には面白くなかった。そのくせ誰より父の死を悲しんで泣く幸子だのに、明るいときにはそれも気附かず矢鱈と浮き上っているのが不審だった。母が菓子を持って来て二人の前へ置いた。矢代は黙って茶を飲みながら、幸子の話の落ちつくのを待っていたが、幸子はそれからそれへと独り喋りつづけた。友達のこととか親戚のこと、隣家の女中の噂などと、人を笑わすことの巧みな幸子の話を聞きつつも、矢代は、この妹のいる前ではやはり今夜も駄目だとあきらめようとするのだった。
 そのうち話も衰えて来て皆が黙り込んだとき、幸子は急にじろじろ兄を見始めた。そして、眼を異様に耀かせ気
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