猫が五疋もいて、中の一疋がこの朝死に、この葬いに幸子がいって悔みに花束を出すと、声を揃えて一家が泣いたという有様を、妹は口真似、手真似までしているらしくおどけた笑い声だった。
 あの快活な笑い声へ、ぱしゃッと水を浴せるように、いま結婚の話を持ち出すことを考えると、矢代は二階から降りて行くのもまた怯むのだった。しかし、こういうことでは、いつまでたっても決しかねるばかりだと思い、ちょうど折よく怯んだのを幸いに、その自分の弱味を摘まみ出し前へひき据える気持ちで、彼は自分から階下へ降りていった。何んとなく猫を一疋摘まみ下げている風で、笑いのまだ消えない二人の傍へ彼は静に坐ってから、お茶を母に先ず頼んだ。
「いまお呼びしようかと思ってたところよ。」
 と幸子は母に代り、急須に茶を淹れながら云った。
「兄さん聞いてらっしたんでしょう。猫のお葬式よ。人間とちっとも変らないの。お隣り。」と幸子は肩を竦めそこだけ声を低めて、またくっくっとおかしそうに笑った。
「でも、それだけにしときなされば、御功徳になるものですよ。そんなに出来るものじゃありませんよ。お優しい方だからね。」と母は笑いを停めて云った。

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