今の身を引立てる祝詞とも合せ考えられて来るところに、この句の不思議な作用があった。そして、この場合はそれが後者だと思えて来る度がいよいよ強まって来たとき、
「頂戴しました。有りがとう。」
と矢代はそうひょっこりと東野に云った。
「いや――」と東野はさすがに嬉しそうな顔に変った。しかし、婦人たちは矢代の挨拶を真紀子たち双蝶のボストンに於ける睦しさの返礼と解したと見えて、急に笑い出した。矢代もそう受けとられても無理なく当然のときとて、一緒に笑った。
「こちらの鍋はいっこうに元気がないな。火を一つ掻き立てて見てくれ給え。」と矢代は鍋の耳を両箸で持ち上げて千鶴子に催促した。千鶴子は矢代に気附かれた具合の悪さで首を曲げ、燠の灰を払い落して立てよせながらも、やはり虚ろなように元気が乏しかった。矢代は彼女の元気のない手もとを見ていて、原因は真紀子の美しい俳句からではなく、むしろ東野の家を出る前から続いているように感じら打て来ると、それなら眉子山房のあのヨルダン河の水を見た以来の苦しさの名残りだと気がつき、そういうものならこれは一日や二日では癒らぬものだと、彼も同時に山房の水の寒けが再び襲って来るの
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