りつづけて沈んだ。矢代はときどき千鶴子を見たが、千鶴子はその度びに視線を彼から反らして悄気て来た。
 矢代は、東野と真紀子との間を知りたく追い廻していた自分の眼に、ぱっと投げかけた東野の老練大胆な句の選択の仕方には、千鶴子や自分の若さに対して復讐めく興味の潜みも覚えたが、それが直接こちらへも、響き傾いて来る波の高さだとは予期しなかっただけに佗しかった。それも相手の二人は、別の鍋に揃って対い、エピキュリヤンの鍛錬に打ち向ってゆく覚悟歴然としつつある際だったので、こちらの鍋もストイシズムで立ち向いたい戦闘心の秘かに燃えかかろうとする矢さき、千鶴子に沈み込まれては、炭火も崩れるようで鍋を覗くのも自然に滅入った。
「蝶二つ一途に飛ばん波もがな――これはボストンでの作だったかな。勢いあまって悲しさ優れりというところだ。」
 となお東野は続けた。もう何気なく云っているのではなかった。瞭らかに、いずれ矢代たちの若さには負けるのだと云いたげな、無遠慮な彼の戯れも籠った放胆が見えて、矢代は、この仲人の寂しさも急に人事ではなく思われて来るのだった。が、それも口誦んでいるうちに、ふとどこか沈んだこちら二人の
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