金銭ではないと思ったが、長男の月給はなおさらだ。
「一回月給を貰って、忽ち馘とは、これはまた無常迅速なものだね。しかし、おれのときよりお前の方が多いから、豪いもんだ。」
私は嬉しくなったので妻に参右衛門の仏壇へ状袋を上げてくれと頼んだ。
「あたしもそう思っていたんですのよ。でも、ここのは他家のお仏壇でしょう。かまわないかしら。」
「どこでも同じさ。」
私はやはり死んだ父に最初の子供の月給は見せたくて、こんなときは誰もするようなことを、争われず自分もするものだなと思った。そのくせ自分が最初に貰ったときは、家に仏壇もあるのに帰途忽ち使ってしまったが、子供の月給となると、そうも簡単になりかねて、眼の向くところほくほくして来るのは、何とも知れぬ動物くさい喜びで気羞しいのは、これはまたどうしたことだろうか。
「お前は夜おそく毎日帰って来たからな。あの長い真暗な泥路よく帰れたもんだ。」
私はそんなことは云わないが、どうも内心絶えずそう云っているようで、ふとまた自分の父のことも思い出したりした。私の父も表面さも冷淡くさく何事も色に出したことはなかったが、私の二十五歳のとき、「南北」という作品を
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