四百円――罰があたる、罰があたる。」とまた云った。
「それだって、お米が買えなけれやあたしたち、餓え死するわ。売って下さいよ、四百円でね。」
「売られん売られん。この間も常会で、二百円までなら闇じゃないということになったでのう。おれは闇は大嫌いだ。百五十円なら一俵だけだと、何とかなるが。」
「でもそれじゃあんまりだわ。じゃ、三百円。」と妻は云った。
横から、東京へ嫁入して手伝いに戻っている娘が聞いていて、妻の持って来た衣類を見ると、「欲しいのう。おれの着物にしてくれ。」と云い出した。そこで話は、米は売らぬが足らぬ前だけ少しずつならやるという相談になったらしい。
「今どきこんな人もいるのかしらと思ったわ。あたし、帰りに二度も転んで、ああ痛ッ、ここ打って――ああ痛ッ。」
妻は横に身体を崩し今ごろ腰を撫でている。上には上があり、下には下があるものだと私は思った。
十一月――日
山峡から山の頂へかけて一段と色を増して来た紅葉。ゆるぎ出て来たように山肌に幕を張りめぐらせた紅葉は、人のいない静かな祭典を見るようだ。鮮やかなその紅葉の中に日が射したり、驟雨が降りこんだりする間も、葉を払い落
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