した柿の枝に実があかあかと照り映え、稲がその下で米に変っていく晩秋。朝夕の冷たさの中から咲き出して来た菊。どの家の仏間にも新藁の俵が匂いを放っていて、炉端の集団は活き活きした全盛の呼吸を満たして来る。

 参右衛門の仏間の十畳も、新藁でしっかり胴を縛った米俵が重重しく床板を曲らせて積み上り、先ず主婦の清江の労苦も報われた見事な一年の収穫だ。確実に手に取り上げてみた事実の集積で、心身の潔まるような新しい匂いが部屋に籠っている。明るい。――しかし、まだ出征している清江の長男は帰って来ない。遠山にもう雪がかかっているのに。

 銀杏の実が降って来る。唐芋という里芋と同じ芋は、ここでは泥田の中で作っているが、清江はこれを掘りに朝からもう泥の中へ浸ってがぼがぼ攪き廻している。私は感動より恐怖を覚えた。もうこの婦人は労働マニアになっているのではあるまいか。

 私は沼の周囲の路をまた一人で歩いてみる。この路は平坦で人のいたことは一度もない。垂れ下った栗の林に包まれ落葉が積っているので、つい私はここへ来て一人になる。そうすると、いつも定って私の胃には酸が下って来て腹痛になり、木の切株に休みながら沼に
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