を越して、羽黒、湯殿、月山、三山の重なりを見ていると、それと自然に対抗したくなって来る鞍乗り心地で、むかしこの地を本陣とした西羽黒の対立心が、向うの東羽黒に敗れ、滅亡の因を作ったことも頷《うなず》かれる眺望である。前方の鳥海山も今日は見事な晴れ姿だ。
「海がこうして見えて来ないと、あたしにはいい景色には見えないんですもの。ここだといいわ。ほんと、素晴しいわ。」
「今ごろ云ったってもう駄目だ。」
柴を背におい、鞍乗の尾根路を左に登りながら、妻はここの海の見える所へ家を一つ建てたいとまた云い出した。しかし、ここでは水を下から運ばねばなるまい。海からの風も激しくあたることを予想しなければならぬ。
「僕はここから海までの草原の傾斜を牧場にすれば、いい牧場になると思うが、と話したことがあるんだ。そうしたら、菅井の和尚さん、専門家がいつか来たときも、ここは牧場としては理想的だといったそうだ。」
自慢の形になったが、その実、チロルの草原でこのような所に鈴を首につけた牛がひとり歩いていたのを思い出し、牧場の専門家も同様な所を見て来たのであろうと私は思ったりした。
「やっぱりここは絶景だよ。こういう
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