けの景色は、そうざらに有るもんじゃないよ。絶景といってもいい。」
「絶景だ絶景だと仰言るもんだから、どんなにいいかしらと思っていたわ。こんなの、山と田ばかしじゃありませんか。」
しかし、景色というものはそういうものかもしれないと私は思った。どこが良いのかと考え出したが最後、どのような景色だってもう駄目なものである。
「お前は小さいときからこのへんの山の景色に見馴れているから、珍らしくないのだよ。他国人の僕がお前の国の景色に感心してやってるのに、心の分らない女だなア。柴より頭だ。」
「いいえ、あたしは柴柴。」
自分の一生は何んだかふとこれに似たことばかしのような気がして来たが、しかし、私はこれで良いのだと思った。谷間いっぱいに生えているいたどりはもう黄色く枯れかかっている。私は随分これで煙草の代用として助かったのだが、今のうち採って置かぬと用にはならぬかもしれない。峠まで登ったところで、下に秋の冴えた海が見えて来た。馬の背に跨がった感じのこの鞍乗峠はいつ見ても眺望は優れている。私はもう夫婦喧嘩はやめにした。ほとんど垂直になだれ下った草原の断崖に挟まれた海面は、今日は穏かだ。右手の平野
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