を冠って寝ている反絵の口を開いた顎《あご》とであった。
「不弥の女、不弥の女。」
 彼は立ち上って卑弥呼の部屋へ行こうとしたとき、反絵の足に蹉《つまず》いて前にのめった。しかし、彼の足は急いでいた。彼は蹌踉《よろ》めきながら、彼女の部屋の方へ近づくと、その遣戸《やりど》を押して中に這入《はい》った。
「不弥の女。不弥の女。」
 卑弥呼《ひみこ》は白鷺の散乱した羽毛の上に倒れたまま動かなかった。
 反耶は卑弥呼の傍へ近寄った。そうして、片膝をつきながら彼女の背中に手をあてて囁《ささや》いた。
「起きよ、不弥の女、我は爾の傍へ来た。」
 卑弥呼は反耶の力に従って静かに仰向《あおむけ》に返ると、涙に濡れた頬に白い羽毛をたからせたまま彼を見た。
「爾《なんじ》は何故に我を残してひとり去った。」と反耶はいった。
 卑弥呼は黙って慾情に慄《ふる》える反耶の顔を眺め続けた。
「不弥の女。我は爾を愛す。」
 反耶は唇を慄わせて卑弥呼の胸を抱きかかえた。卑弥呼は石のように冷然として耶馬台《やまと》の王に身をまかせた。
 そのとき、部屋の外から重い跫音《あしおと》が響いて来た。そうして、彼女の部屋の遣戸が
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