に出よ。」反絵は再び卑弥呼の傍へ戻って来た。
「王よ、我を酒宴に伴うことをやめよ。爾は我と共に我の部屋にとどまれ。」
 卑弥呼は反耶の手を取ってその傍に坐らせた。
「不弥の女、不弥の女。」
 反絵は卑弥呼を睨《にら》んで慄《ふる》えていた。「爾は我と共に部屋を出よ。」
 彼は彼女の腕を掴《つか》むと部屋の外へ出ようとした。
 反耶は立ち上って曳《ひ》かれる彼女の手を持って引きとめた。
「不弥の女、行くことをやめよ。我とともにいよ。我は爾の傍に残るであろう。」
 反絵は反耶の胸へ飛びかかろうとした。そのとき、卑弥呼は傾く反絵の体躯をその柔き掌《てのひら》で制しながら反耶にいった。
「王よ、使部の傍へわれを伴え、我は彼らを赦すであろう。」
 彼女は一人先に立って遣戸の外へ出て行った。反絵と反耶は彼女の後から馳け出した。しかし、彼らが庭園の傍まで来かかったとき、五人の使部は、最早や死体となって土に咬《か》みついたまま横たわっていた。兵士たちは王の姿を見ると、打ち疲れた腕に一段と力を籠《こ》めて、再び意気揚々としてその死体に鞭を振り下げた。
「鞭を止めよ。」と、反耶はいった。
「王よ、使部は死
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