》りなだけだ、それほど結構《けっこう》なことはないではないか。われわれの関係《かんけい》は他人《ひと》とは違《ちが》う。一|度《ど》地上《ちじょう》から足《あし》を洗《あら》わなければ古《ふる》い生活《せいかつ》の匂《にお》いはどこまでだってくっついてくるにちがいないのだ。もしこの上《うえ》絶《た》えずわれわれが古《ふる》い生活《せいかつ》に追《お》われるようなら、そのときを限《かぎ》りとしてわれわれの生活《せいかつ》を私《わたし》から打《う》ち切《き》るだろう! そう私《わたし》がいい切《き》るとリカ子《こ》も初《はじ》めて頷《うなず》いた。頷《うなず》くと私《わたし》より彼女《かのじょ》の方《ほう》が乗《の》り気《き》になり出《だ》し、直《す》ぐそれから航空会社《こうくうかいしゃ》へ電話《でんわ》をかけて二|席《せき》を買《か》った。間《ま》もなく二人《ふたり》は鳥《とり》になるのだ。鳥《とり》に。この喜《よろこ》びは地質学者《ちしつがくしゃ》の私《わたし》にとってもこの上《うえ》もなく大《おお》きいのだ。山《やま》と川《かわ》と海《うみ》と平野《へいや》の上《うえ》を飛《と》び越
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