んど》は私《わたし》からいつの間《ま》にかQに対《たい》して頭《あたま》を下《さ》げているのである。恐《おそ》らくリカ子《こ》にしてもQにひそかに頭《あたま》を下《さ》げているのであろうと思《おも》うと私《わたし》はぜひ彼女《かのじょ》がそうであってくれれば良《よ》いと思《おも》い出《だ》した。私《わたし》はリカ子《こ》にお前《まえ》はQに対《たい》してさきから一|度《ど》でも謝罪《しゃざい》をしたことがあるか、と訊《き》いてみた。するとリカ子《こ》は黙《だま》っていていつまでも答《こた》えない。それで神前《しんぜん》へいってお辞儀《じぎ》をしたって何《なん》の役《やく》にも立《た》つかというと、そんなことをしてはあなたの有難《ありがた》さがなくなってしまうという。それではまたいつかお前《まえ》はQの所《ところ》へ舞《ま》い戻《もど》ってしまうにちがいないというと、リカ子《こ》はまた私《わたし》の後《うしろ》へ廻《まわ》って泣《な》き始《はじ》めた。私《わたし》は彼女《かのじょ》に自分《じぶん》がお前《まえ》にそういうことをいうのは自分《じぶん》のQとは比較《ひかく》にならぬ善良《ぜん
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