しあ》わせがないといって泣《な》き始《はじ》めた。私《わたし》はリカ子《こ》の泣《な》くのを眺《なが》めていると心《こころ》が自然《しぜん》に折《お》れて来《く》るのを感《かん》じた。それにしても、さきにはあれほど私《わたし》を罵《ののし》っていたのに今《いま》は何《な》ぜこれほども惨《みじ》めに弱《よわ》っているのであろうか、これは多分《たぶん》猛々《たけだけ》しい女《おんな》の私《わたし》に負《ま》けていく姿《すがた》なのであろうと思《おも》いながらも、私《わたし》は彼女《かのじょ》の面部《めんぶ》を叩《たた》きつけるように頭《あたま》を屈《くっ》しなかった。するとリカ子《こ》は私《わたし》の身体《からだ》を無理矢理《むりやり》に神前《しんぜん》の方《ほう》へ向《む》けると頭《あたま》を上《うえ》から圧《お》さえるのだ。私《わたし》は怒《おこ》ることは出来《でき》ないのだがリカ子《こ》のその手《て》をはじき返《かえ》すと人込《ひとごみ》の中《なか》へ這入《はい》ろうとした。彼女《かのじょ》は私《わたし》を追《お》っ駈《か》けて来《く》るとまたいうのだ。あなたは私《わたし》に怒《おこ
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