しょ》を眺《なが》めて心《こころ》を沈《しず》め、あらゆる凡人《ぼんじん》の長所《ちょうしょ》を持《も》ち、心静《こころしず》かに悟得《ごとく》し澄《す》ましたような顔《かお》をし続《つづ》けてひそかに歎《なげ》き、闘《たたか》いを好《この》まず気品《きひん》を貴《とうと》んで下劣《げれつ》になり、――私《わたし》は私自身《わたしじしん》でまだかまだかと私《わたし》をやっつけ出《だ》すと、面前《めんぜん》のリカ子《こ》と一|緒《しょ》に兇暴《きょうぼう》に笑《わら》い出《だ》した。Qが陰《かげ》でひそかに私《わたし》の悪口《あっこう》をいったことが、今《いま》は私《わたし》に彼《かれ》への尊敬《そんけい》の念《ねん》を増《ま》さしめるだけとなった。しかし、それにしても私《わたし》のこの心《こころ》の動《うご》きは本当《ほんとう》であろうか。私《わたし》の物《もの》の見方《みかた》は間違《まちが》いであるとしても、おのれの痛《いた》さを痛《いた》さと感《かん》じて喜《よろこ》ぶ人間《にんげん》は私《わたし》だけではないであろう。私《わたし》の豪《えら》さ、もしそれがあるなら、私《わたし》 
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