ウィニズム》のダーウィンを思《おも》えば、私《わたし》は一|個人《こじん》が他個《たこ》に敗北《はいぼく》することはそれは敗北《はいぼく》することではなくして神《かみ》への奉仕《ほうし》に思《おも》えてならないのだ。もしそれが敗北《はいぼく》なら、勝《か》ったものは必《かなら》ず誰《たれ》かに負《ま》けねばならぬ。AとQとの闘《たたか》いもそれは闘《たたか》いではなくして次《つぎ》に現《あら》われる天才《てんさい》への贈物《おくりもの》を製造《せいぞう》しているにすぎないと私《わたし》がいえば、今《いま》まで黙《だま》って私《わたし》の饒舌《しゃべ》っているのを聞《き》いていたリカ子《こ》は急《きゅう》に私《わたし》の胸《むね》の上《うえ》へ倒《たお》れて来《き》た。彼女《かのじょ》のこの感情《かんじょう》の転向《てんこう》がもしQと彼女《かのじょ》の上《うえ》に、再《ふたた》び幸福《こうふく》をもたらすなら――と私《わたし》が思《おも》っていると、それは意外《いがい》にもリカ子《こ》が私《わたし》へ転向《てんこう》して来《き》たことを示《しめ》していたのだ。なるほど個人《こじん》の負 
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