《あわ》れむ方《ほう》が私《わたし》を尊重《そんちょう》することになっているのは分《わか》っている。しかも、彼等《かれら》にとって私《わたし》を憐《あわ》れみ続《つづ》けることはなお一|層《そう》の苦痛《くつう》を続《つづ》けていることになっているのだ。ここに不用《ふよう》なものが一つある。――私《わたし》は或《あ》る日《ひ》それをリカ子《こ》に説明《せつめい》してQにいうように彼女《かのじょ》にいった。すると彼女《かのじょ》のいうにはそんな取越苦労《とりこしくろう》はあなたたちのすることではなくって、私《わたし》ひとりでしていれば良《よ》いのだという。それならもう来《き》て貰《もら》わない方《ほう》が結構《けっこう》だというと、私《わたし》はあなたがやはり好《す》きなんだから仕方《しかた》がない。もう暫《しばら》くすっかり嫌《きら》いになるまで逢《あ》っていてくれと頼《たの》むのだ。あまりに虫《むし》が良《よ》く、あまりにそれは勝手《かって》すぎるではないかと私《わたし》がいっても、こんなにしたのはそれなら二人《ふたり》の中《うち》の誰《だれ》だという。そういわれればそれは矢張《やは
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