つものように噴火口《ふんかこう》から拾《ひろ》って来《き》た粗面岩《そめんがん》の吹管分析《すいかんぶんせき》にかかっていると、突然《とつぜん》リカ子《こ》が私《わたし》の部屋《へや》に這入《はい》って来《き》てデアテルミイが壊《こわ》れたようだから見《み》て貰《もら》いたいという。私《わたし》は彼女《かのじょ》に何事《なにごと》かいわれると不思議《ふしぎ》に自分《じぶん》の勉強《べんきょう》を投《な》げ出《だ》す習慣《しゅうかん》がついていて、投《な》げ出《だ》した瞬間《しゅんかん》これは失敗《しま》ったといつも思《おも》うのだ。そこへいくとQは勉強《べんきょう》の時《とき》となると誰《たれ》が何《なに》をいっても横《よこ》を向《む》くことさえ稀《まれ》である。私《わたし》は私《わたし》の勉強《べんきょう》を投《な》げ出《だ》してリカ子《こ》の後《うしろ》から従《つ》いていきながらもQの豪《えら》さを考《かんが》えさせられてひとり腹立《はらだ》たしささえ感《かん》じていた。それで私《わたし》は他人《たにん》の勉強《べんきょう》をしているとき教養《きょうよう》ある女性《じょせい》ともあ
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