で木のように弛《ゆる》んで来た。彼女は動きとまった。そうして、終《つい》に、死は、鮮麗な曙《あけぼの》のように、忽然《こつぜん》として彼女の面上に浮き上った。
 ――これだ。
 彼は暫く、その眼前に姿を現わした死の美しさに、見とれながら、恍惚《こうこつ》として突き立っていた。と、やがて彼は一枚の紙のようにふらふらしながら、花園の中へ降りていった。



底本:「日輪・春は馬車に乗って 他八篇」岩波文庫、岩波書店
   1981(昭和56)年8月17日第1刷発行
底本の親本:「新選横光利一集」改造社
   1928(昭和3)年10月15日
初出:「改造」
   1927(昭和2)年2月号
入力:土屋隆
校正:noriko saito
2008年1月23日作成
青空文庫作成ファイル:
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