洞房の華燭前夢を温め 仙窟の煙霞老身を寄す 錬汞《れんこう》服沙一日に非ず 古木再び春に逢ふ無かる可けん
     河鯉権守《かわこいごんのかみ》
夫《そ》れ遠謀|禍殃《かおう》を招くを奈《いか》ん 牆辺《しようへん》耳あり※[#「こざとへん+是」、第3水準1−93−60]防を欠く 塚中血は化す千年|碧《みどり》なり 九外屍は留む三日香ばし 此老《しろう》の忠心|※[#「白+激のつくり」、第3水準1−88−68]日《きようじつ》の如し 阿誰《あすい》貞節|凜《りん》として秋霜 也《ま》た知る泉下遺憾無きを ※[#「木+親」、第4水準2−15−75]《ひつぎ》を舁《かつ》ぐの孤児戦場に趁《おもむ》く
     蟇田素藤《ひきたもとふじ》
南面孤を称す是れ盗魁《とうかい》 匹として蜃気楼《しんきろう》堂を吐くが如し 百年の艸木《そうぼく》腥丘《せいきゆう》を余す 数里の山河|劫灰《こうかい》に付す 敗卒庭に聚《あつ》まる真に幻矣 精兵|竇《あな》を潜る亦奇なる哉 誰か知らん一滴黄金水 翻つて全州に向つて毒を流し来る
     里見義実《さとみよしさね》
百戦孤城力支へず 飄零|何《いず》れ
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