惜むべき貴重書であった。原名を"Cartas que los padres y hermaos de la Compania de Iesus, que andan en los reynos de Iapon"と云い、日本に在留したザビール初めアルメイダ、フェルナンデス、アコスタ等エズイット派の僧侶が本国に寄せた天文十八年(エズイット派が初めて渡来した年)から元亀二年(南蛮寺創設後三年)までの通信八十八通を集めたもので、一五七五年即ち天正三年アルカラ(西班牙《スペイン》)の出版である。殊に此書は欧羅巴刊行の書籍中漢字を組入れた嚆矢としてビブリオファイルに頗る珍重される稀覯書である。
帝国大学の図書室で第一の稀覯書として珍重するは所謂"Jesuit press"と称する是等のバテレンが本国へ送った通信であって、蒐集の量も又決して少く無いから、或は此書翰集も大学に収蔵されてるかも知れないが、大学を外にしては日本では他の図書館或は蒐集家の文庫に此稀覯書を発見し得る乎怎う乎、頗る掛念である。
丸善は新書の供給を旨としておる。無論、日本では猶だ外国の稀覯書を珍重するほどの程度に達していないから
前へ
次へ
全26ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
内田 魯庵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング