所で「社会主義か無政府主義か」と聞かれた時、「もし無政府主義が社会主義と別のものであるなら、自分は無政府主義者ではないが、自分は社会主義と無政府主義とを同じものと信じているから、その意味において無政府主義者と言われてもかまわない」と言ったような答えをしたかと覚えている。
そこで再び赤旗事件当日のことに立ちもどる。わたしは山川君とふたり、錦町の警察に連れて行かれてみると、そこの留置場にはすでに大杉、荒畑、森岡、百瀬、村木、宇都宮、佐藤などの猛者《もさ》が来ており、外に神川、管野、小暮、大須賀などの婦人連も来ていた。留置場は三室あって、それが廊下を中心にして向かい合っていた。わたしの室にはわたしと外にだれか一人、隣の室には婦人連、そして向かい側の大部屋にはその他の大勢という割当てであったが、その大部屋はまるで動物園のおりよろしくで、皆が鉄ごうしにつかまって怒鳴る、わめく、笑いくずれるの大騒ぎであった。巡査の態度があんまりむちゃなので、みなとうとうこうしの中からつばを吐きかけることをもって唯一の戦闘手段とした。どうしたイキサツからであったか、大杉君はとうとう廊下に引っ張り出されて、さんざん
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