ばしった青年、片そでのちぎれた若者、振りみだした髪を背になびかせて走っている少女などが、みな口々にワメキ叫んでいた。そして巡査らがいちいちそれを追いまわしたり、引っつかまえたり、ネジふせたりしていた。わたしは最後に一ツ橋の通りで、また巡査をいろいろになだめすかし、一つの赤旗を巻いて若い二人の婦人にあずけ、決して再びそれをほぐらかさぬこと、そしてまた決してそれを他の男に渡さず、おとなしく持って帰ることという堅い約束をして、それでヤット始末をつけた。その時、今一つの赤旗はすでに、それを取られまいと守っていた数人の青年と一緒に、巡査に引きずられて行ってしまった。
それからわたしは神保町に歩いて行くうち、たしか山川均君と落ちあった。山川君もほぼわたしと同じような役まわりを勤めていたらしい。それで、引っ張られた者は仕方がないとして、山川君は守田有秋君が二六新報社で待ち合わせてるはずだから、そこに行くと言い、わたしはそのまま淀橋の宅に帰るつもりで、二人が別れようとしているところに、また巡査が二、三人やって来た。そしてわたしらをも警察に連れて行くという。それはおかしいじゃないかと言ってみたが、どう
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