たしが表に飛び出した時には、一人の巡査がだれかの持っている赤旗を無理やり取りあげようとしていた。多くの男女はそれを取られまいとして争っていた。わたしはすぐその間に飛び込んで、そんな乱暴なまねをしないでもいいだろうという調子で、いろいろ巡査をなだめたところ、それでは旗を巻いて行け、よろしいということになり、それでそこは一トかたついた。錦輝館の二階を見あげると、そこにはあとに残った人たちがみな縁側に出て来て見物していた。
しかしわたしはすぐ別の方面に目を引かれた。少し離れた向こうの通りに、そこでもまた、赤旗を中心に、一群の男女と二、三人の巡査が盛んにもみあっていた。わたしはまた飛んで行って、その巡査をなだめた。あちらでも旗を巻いて行くことに話ができたのだからと、ヤットのことで彼らを説きふせた。しかし騒ぎはそれで止まらなかった。巻いた旗が再び自然にほぐれた。巡査らはまたそれに飛びかかった。あちらにも、こちらにも、激しいもみあいが続いた。錦輝館の前通りから一ツ橋通りにかけて、まっ黒な人だかりになった。その中に二つの赤旗がおりおり高くひるがえされたり、すぐにまた引きずりおろされたりした。目の血
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