ぼちゃ)、人参、牛蒡《ごぼう》、瓜、黄瓜など、もとよりあった。蕗《ふき》もあり、みょうが[#「みょうが」に傍点]もあり、唐黍《とうきび》(唐もろこし)もあり、葱もあり、ちしゃ[#「ちしゃ」に傍点]もあり、らっきょ[#「らっきょ」に傍点]もあった。
 ことに西瓜は父の誇りであった。あの大きな丸い奴が、あるいは青く、あるいは白く、朝の畑に露を帯びて転がっているのを、私はよく父の尻について検分に廻ったものだ。苗の時から、花落ちの時から、いろいろ苦心して育てた奴が、一日一日に膨大して、とうとうここまで、一貫目以上もあろうというところまで大きくなったのだから、父が上機嫌で破顔微笑するのも無理はない。私としても、虫取りの時から父の助手を勤めているのだから、幾分か成功の光栄を分有する権利があるわけであった。虫取りの時には、粘土を水でネバネバにした奴を茶碗に入れておいて、葉裏や若芽にとまっている黒い小さい虫を見つけては、そのネバネバを附けた箸の先で、ソット苗にさわらないようにして取るのだった。それから花落ちの時には、ツケギで立札をして、その月日を記しておくのだから、およそ何日間であったか、それは忘れた
前へ 次へ
全14ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
堺 利彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング