鴉と正覺坊
若山牧水
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)不格好《ぶかつかう》な
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)走り※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]つてゐる
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ぽき/\と噛み折られた。
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正覺坊
いつもより少し時間は遲かつたが、晩酌前の散歩をして來ようと庭つゞきの濱の松原へ出かけて行つた。其處には松原を縱に貫いて通じてゐる靜かな小徑があり、朝夕私の散歩徑となつてゐる。一二町も歩いたところで、濱から上つてその小徑を切る小徑がある。其處で三人連の漁師の子供に出會つた。いづれも十歳ばかりの見知らぬ子供たちであるが、なかの一人が行きちがひさまに矢庭に私に向つて兩手をひろげて、
『龜があがつたよ、斯んなにでつけえ龜が……』
と言つた。
するとあとの二人も振返つて同じ樣に兩手を押しひろげながら、
『龜があがつたよ、でつけえ龜が……』
村に知らせにでも行くか、息
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