んで來て、頭の上の松にとまる。一羽のときもあるが、多くは二羽だ。そして高い枝から次第に低く、ともすれば私の手のとゞく所までもおりて來て頻りに、
『カアオ、カアオ』
 と啼く。或る時は松の皮を嘴で突き剥いで我等の上に落す。
 それだけならばまだしも、我等が其處を立つて家の方に歸らうとすると、あとになりさきになり、松から松の枝を傳つてあとを追つて來る。そして、いよ/\家の側の松まで來て、そこでやめる。一度や二度ならば氣もつかなかつたらうが、自づと解る程にまでそれを繰返してゐるのである。そしてそれは多く子供を連れて行つてゐる時で、私一人の時にはあまりやつて來ない。
『ふうちやん、あの鴉は屹度君と遊びたいんだよ、それであんなに君のあとを追つて來るのだよ』
『さうか知ら、あの鴉、僕と遊びたいのかなア、さうかなア』
 この生意氣先生、甚だ得意であつた。そして早速そのことを母親に報告した。初めは相手にしなかつたが、やがて母親もそれを承知せざるを得なくなつた。
『ほんとだ、ふうちやんと仲好しになりたくつてしやうがないんだよ、遊んでおやりなさいよ』
『うむ、僕、遊んでやらア』
 或る日、また滑稽な場面を
前へ 次へ
全9ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
若山 牧水 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング