出て
 はだかだ はだかだと鳴いた
 やい蛙
 お前だつてはだかだ


ダリヤ

 ダリヤ、 ダリヤ
 赤いダリヤ
 大きなダリヤ

 あたいの顏と
 くらべて見たら
 あたいの顏より
 大きなダリヤ
 眞赤《まつか》なダリヤ


秋のとんぼ

 茅萱《ちがや》のうへに
 ほろほろと
 きいろい
 胡桃《くるみ》の葉が落ちる

 茅萱の蔭から
 ゆめのよに
 赤い蜻蛉《とんぼ》が
 まアひ立つ

 とんぼ可愛や
 夕日のさした
 胡桃の幹に
 行《い》てとまる


百舌鳥《もず》が一羽

 粟《あは》の畑《はたけ》で
 百舌鳥《もず》が一羽
 雀の眞似して
 啼いてゐたが
 雀は來ぬので
 ひろい黄いろい粟畑越えて
 向うの山にとんで行つた


雪よ來い來い

 雪よ來い來い坊やは寒い
 寒いお手々をたたいて待つた
 雪よこんこと降つて來い

 雪よ來い來い坊やは寒い
 さむい天からまん眞白に
 ちいろりちろりと降つて來い

 雪よ來い來い坊やは寒い
 さむいお手々は紅葉のやうだ
 雪のうさぎがこさへたい


冬の畑

 冬のはたけは土ばかり
 なんにも見えない土ばかり
 見えない向う
前へ 次へ
全6ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
若山 牧水 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング