樹木とその葉
自然の息自然の聲
若山牧水

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)橡《とち》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)不圖《ふと》[#「不圖《ふと》」は底本では「不《ふ》圖」]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)から/\に
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

 私はよく山歩きをする。
 それも秋から冬に移るころの、ちやうど紅葉が過ぎて漸くあたりがあらはにならうとする落葉のころの山が好きだ。草鞋ばきの足もとからは、橡《とち》は橡、山毛欅《ぶな》は山毛欅、それ/″\の木の匂を放つてゞも居る樣な眞新しい落葉のから/\に乾いたのを踏んで通るのが好きだ。黄いな色も鮮かに散り積つた中から岩の鋭い頭が見え、其處には苔が眞白に乾いてゐる。時々大きな木の根から長い尾を曳いて山鳥がまひ立つ。その姿がいつまでも見えて居る樣にあらはに明るい落葉の山。
 それも餘り低い山では面白くない。海拔の尺數も少ない山といふうちにも暖國の山では落葉の色がきたない。永い間枝にしがみついてゐて、そしていよ/\落つる時
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