きお知らせをします。何が何だか解らない頭で燒跡をウロ/\してゐます。是から義弟の家へ(是は無事)整理にゆく處です。咲子の家(芝新堀)も全燒です。是にはまだ行きませんから生死は判りません。社友の中にも氣の毒な方が少くないでせう、高久君はどうしたらう。
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 中島君が早々東京へ出立した事をば名古屋の他の社友から早速通知があつて知つてゐた。行つてそして斯んな事になつたのだ、と暗然とした。後で直ぐこの取消は來たのであつたが。
 十一日にミチヤさんが靜岡の實家からやつて來た。見るからに憔悴して、さながら生きた幽靈と云つた形である。不思議な氣持で食卓を中に相向ひながら、私は幾度も涙を飮んだ。瞳孔も緊つてゐず、ともすれば話の返事もちぐはぐになりがちであつた。
 然し、この人に逢つて愈々東京の大體は解つた。誰も無事、彼も無事、あの人も私同樣着たまゝで燒出されたさうですけれど、命だけは助かりました、といふ同君の話を聞きながら、又しても瞼は熱くなつて來るのである。
『さうすると、殆んど全部東京の知人は助かつたといふわけか、どうも本統でない樣な氣がするが。』
『まつたく何かの奇蹟を聞く
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