樹木とその葉
春の二三日
若山牧水
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)櫟林《くぬぎばやし》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから3字下げ]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)てく/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
[#ここから3字下げ]
くもり日は頭重かるわが癖のけふも出で來て歩む松原
[#ここで字下げ終わり]
三月××日
千本松原を詠んだなかの一首に斯んな歌があつたが、けふもまたその頭の重い曇り日であつた。朝からどんよりと曇つてゐた。
非常に急ぎの歌の選をやつてゐたが一向に氣が乘らない。五首見て一ぷく、十首見ては一服と煙草ばかり吸つていつの間にか晝近くなつてゐたところへ、近所の服部さんの宅から使が來た。庭の紅梅が過ぎかけたから見にいらつしやい、一緒にお晝をたべませうといふ事である。赤インキのペンをさし置いて早速立ち上つた。そして使の人の歸つて行くうしろからてく/\と歩いて行つた。
紅梅はまだ眞盛りであつた。かなりの老木で、根もとから直ぐこま/″\と八方
次へ
全13ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
若山 牧水 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング