樹木とその葉
秋風の音
若山牧水
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)秋風の音《ね》を
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから3字下げ]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)をり/\
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いちはやく秋風の音《ね》をやどすぞと長き葉めでて蜀黍《もろこし》は植う
[#ここで字下げ終わり]
私は蜀黍の葉が好きである。その實を取るのが望みならば餘り肥料をやらぬ方がよい。然し、見ごとな葉を見やうとならばなるたけ多く施した方がよい。
書齋の窓に沿うた小さな畑に私は毎年この蜀黍を植ゑる。今年はその合間々々に向日葵を植ゑて見た。兩方とも丈の高くなる植物で、一方はその葉が長く、一方はその花が大きい。
一年中さうではあるが、夏は別して私は朝が早い。大抵午前の三四時には窓をあけて椅子に倚る。此頃だともう三時半には戸外がうす明るくなつて來る。そのさやかな東明の微光のなかに、伸びるだけ伸びつくしたこの二つの植物が、一つは黒ずんで見えるまでの青い葉を長々と垂れて立ち、一つは今朝に
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