樹木とその葉
若葉の山に啼く鳥
若山牧水
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)棲《す》むところは
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ぴしよ/\の
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今月號の或雜誌に佛法僧鳥のことが書いてあつた。棲《す》むところはきまつてゐて夏のあひだだけ啼く鳥なのかと思つてゐたら、遠く南洋の方から渡つて來て秋になればまた海を渡つて歸つて行く鳥であるさうだ。
私たちの結婚した年であつたから恰度今から十一年前にあたる、武藏の御嶽山《みたけさん》に一週間ほど登つてゐた事がある。山上のある神官の家に頼んで泊めて貰つてゐた。ある夜、私は其處の厠《かはや》に入つてゐた。普通の家のよりずつと廣い厠であつた。良い月の夜で、廣やかな窓から冴えた光がいつぱいに射しこんでゐた。其處へ聞きなれぬ鳥の聲が聞えて來た。何でもツイ厠に近い樹の梢からであつた。
私の癖の永い用を足して自分の部屋に歸つたが、閉め切つた雨戸を漏れてなほその澄んだ聲が聞えて來る。ランプの灯影に
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